室内環境

【試験で問われる内容】
温熱環境の用語理解
結露について
室内の空気環境及び特徴

温熱環境

代謝

 基礎代謝とは、一定の条件のもとにおける、生命維持のために必要な最低限の代謝のことである。
基礎代謝量(kcal/日)は、
基礎代謝基準値(kcal/kg 体重 /日)×基準体重(kg)
で表される。

 エネルギー代謝率(RMR)は、さまざまな身体活動やスポーツの身体活動強度を示すもので、活動に必要としたエネルギー量が基礎代謝量の何倍にあたるかによって活動強度の指標となっている。
エネルギー代謝率(RMR)
$\frac{作業時代謝量-安静時代謝量}{基礎代謝量}$

 呼吸商とは、ある時間において生体内で栄養素が分解されてエネルギーに変換するまでの酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の体積比のことである。
呼吸商
$\frac{二酸化炭素排出量}{酸素摂取量}$

 作業強度とは、代謝量等によって分類される作業の激しさのことである。人体の作業の激しさを意味し、単位は、着席安静時における代謝量に対する各種の作業時における代謝量の比で表すメット(met)あるいはエネルギ一代謝率で表される。

met(メット)

 運動や身体活動の強度の単位であり、人体の単位面積当たりの代謝量(58.2W/㎡)を示し、椅子座安静時の代謝量を1metとする。

clo(クロ)

 衣服の断熱性(熱絶縁性)を示す単位であり、一定条件の下で、1metの代謝と平衡する着衣量を1cloとする。1cloは約0.155㎡・℃/Wである。

有効温度(ET)

 乾球温度、湿球温度及び気流速度において人が感じる体感温度の一種である。
無風で湿度100%の時に同じ体感を得る気温で表し、周壁からの放射の影響を考慮していない。
室温と壁の温度の差が少ない時に使用される。ヤグローが実験的に求めた温度である。

修正有効温度(CET)

 乾球温度、湿球温度、気流速度、放射温度で表す。
有効温度+放射の影響を考慮し、測定はグローブ温度計を用いる。

作用温度(OT)

 乾球温度、気流温度及び放射温度で表す。
実用上、周りの壁面の平均温度と室内気温の平均値で表す。

等価温度(EW)

 乾球温度、気流速度及び放射温度で表す。
実用上、グローブ温度計で測定する。

新有効温度(ET*)

 気温、湿度、気流、放射温度、代謝量(作業強度)及び着衣量で表す。
湿度50%を基準とする。

予想平均申告(PMV)

 熱的中立温度を予測し、人体の温冷感を+3からー3までの7段階で表示する。
気温、湿度、気流、放射温度、代謝量(作業強度)及び着衣量で表す。

予想不満足者率(PPD)

 熱的に不快と感じる人の割合である。

不快指数(DI)

 乾球温度及び相対湿度から求められる、「蒸し暑さ」の指数で、日本人の場合、不快指数85で93%の人が蒸し暑さのため不快感を感じるとされているが、体に感じる蒸し暑さは気温と湿度以外に風速等の条件によっても左右されるため、不快指数だけでは必ずしも体感とは一致しないと言われている。温湿指数(略称THI)とも言われる。

指数
不快感を抱く人が出始める 70~74
半数以上が不快感 75~79
全員が不快と感じる 80~85
我慢ができなくなる不快感 86を超える

不快指数は、$0.72×(気温+湿球温度)+40.6$の式で計算される。

測定機器

オーガスト乾湿計

 水銀棒状温度計2本1組の、一方の感球部を水で湿らせたもので、乾球温度と湿球温度を測定し、湿度を求める。
湿球温度は、ガーゼから水分が蒸発し、気化熱が奪われるため、乾球温度より低い。

グローブ温度計

 黒色つや消し中空銅球の中心に、棒状温度計を挿入したものであり、放射の影響を加味した気温を測定する。
無風に近い状態で、気温と壁面温度に差があるのときに有効であり、等価温度や修正有効温度の測定に用いる。

用語一覧

温熱環境

項目 内容
基礎代謝 一定の条件のもとにおける生命保持のために必要な最低限の代謝
エネルギー代謝率 作業時代謝量と安静時代謝量との差を基礎代謝量で割った値
呼吸商 二酸化炭素排出量を酸素摂取量で割った値
met 人体の単位体表面積当りの代謝量を示す単位
椅座安静状態における代謝量を1metとする。
作業強度はmetで表す。
1metは単位体表面積当り約58.2W、標準的な体格をした成人1人当たり約100W
有効温度(ET) 乾球温度、湿球温度及び気流速度を総合的に考慮した人体に及ぼす実感的な温度
無風・湿度100%の時に同じ体感を得る気温で表す。
周囲の壁体等による放射の効果を考慮していない。
修正有効温度(CET) 乾球温度、湿球温度及び気流速度の他に周壁からの放射温度の影響を考慮した温度
放射による影響を考慮している。
グローブ温度計を用いる。
作用温度(OT) 人体は周囲空間との間で対流と放射による熱交換を行っているが、これと同じ量の熱を交換する均一温度の閉鎖空間の温度をいう。
乾球温度、気流速度及び周壁からの放射温度に関係する。
実用上、周壁面の平均温度と室内気温との平均値で表す。
等価温度(EW) 暖房時に乾球温度、気流速度及び周壁からの放射温度を用いて算出する温度をいう。
グローブ温度計で測定される。
新有効温度(ET 湿度50%を基準とし、気温、湿度、気流、放射温度、代謝量(作業強度)及び着衣量の要素を総合で気に表改した温熱環境指標をいう。
新有効温度は湿度50%を基準とする。
予想平均申告(PMV) 熱的中立温度を予測し、その条件で人体の温冷感を+3から-3までの7段階で表したもの。
気温、湿度、気流、放射温度、代謝量及び着衣量の6つの要素で求める。

結露

 空気は温度によって含むことができる水蒸気の量(飽和水蒸気量)が異なり、暖かい空気ほど多くの水蒸気を含むことができる。暖かい空気が冷やされて、含むことができる水蒸気の量(飽和水蒸気量)以上に冷えると水蒸気が水に変わる。これが結露の発生する仕組みである。

項目 内容
結露

室内側より屋外側の面積が大きくなる出隅部分は、他の部分に比べ室内側に表面結露を生じやすい。外気に接する面積が大きいほど温度差が発生し、結露が発生しやすい。
窓ガラスにカーテンをかけると、ガラス表面の熱伝達率が小さくなり、ガラス表面の温度が低下し、結露を生じやすくなる。
繊維系断熱材を施した外壁における内部結露を防止するために、断熱材の室内側に防湿層を設ける。これは、室内側に結露が発生するためである。
外壁を構成する仕上げ材の内部空隙における水蒸気分圧(実際の水蒸気量)を、その点における飽和水蒸気圧(水蒸気として持てる限界量)より低くすると、内部結露を防止できる。
床暖房以外の暖房をしている室内では、天井付近に比べて冷たい空気が溜まりやすい床付近が表面結露が生じやすい。
室内空気の流動が小さくなると、壁面の空気温度が低下し、表面結露が生じやすい。室内空気の流動が少ないと、壁側の空気が偏って温度が下がり、結露が発生しやすくなる。
ポリスチレンフォームは、発泡プラスチック系の住宅用断熱材としては最も一般的に使われていて、ポリスチレンを主成分として、難燃剤を混ぜて発泡させ、成形したものである。空隙が無いので結露が発生しにくい。

室内環境

酸素(O2)

 大気中の濃度は21%程度であり、濃度が19%を下回り18%近くに低下すると一酸化炭素の発生量が増加する。
更に燃焼により濃度が15%程度になると消化する。

二酸化炭素(CO2)

二酸化炭素
10,000ppm=1%
 濃度が20%以上になると人体に致命的な影響があり、比重は一酸化炭素より大きい。

一酸化炭素(CO)

 炭素が燃焼する際、酸素が不十分な環境で不完全燃焼を起こすと発生する気体。炭素を含む物質が燃焼すると二酸化炭素(CO2)が発生するが、酸素が不足している状態で不完全燃焼を起こすと一酸化炭素が発生する。血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害するため、人体に有害なきわめて危険なガスである。血液中のヘモグロビンは酸素と結びついて全身に酸素を運ぶ役割をしているが、一酸化炭素は酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っている。このため一酸化炭素があるとヘモグロビンは酸素と結びつくことができず、血液の酸素運搬能力が低下してしまい、酸素不足に陥いる。これが一酸化炭素中毒である。
比重は二酸化炭素より小さく、濃度0.16%(1,600ppm)で20分程度で頭痛・眩暈がおこる。
濃度1.28%程度で1~3分で致死する。

浮遊粉塵

 空気中に浮遊する粒径がおおむね10μm以下の物質であり、室内環境に関する浮遊粉じんの濃度基準値については,「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)」により、浮遊粒子状物質(SPM)の量について建築物環境衛生管理基準として、概ね10μm以下の粒子の重量濃度が「空気 1m3につき0.15mg以下」と定められている。
浮遊粉じんは、在室者の活動やその衣類の繊維やほこりなどで発生し、その量は空気の乾燥により増加する。

揮発性有機化合物

 ホルムアルデヒドは、化学物質過敏症シックハウス症候群の原因物質であり、濃度0.1mg/㎥程度で臭気を感じる。空気環境の基準として、ホルムアルデヒドの量は0.08ppm以下であることとされている。

空気に関する一覧表

項目 内容
酸素 酸素濃度が19%以下にすると不完全燃焼が始まり、一酸化炭素が発生する。
18%近くに低下すると、不完全燃焼が著しくなる。
15%程度に低下すると消化する。
二酸化炭素 20%程度以上になると、人体に致命的な影響を与える。
一酸化炭素 0.16%程度になると、20分で人体に頭痛、めまいが生じる。
1.28%程度になると、1~3分で致死する。
浮遊粉じん 在室者の活動やその衣類の繊維やほこりなどで発生し、その量は空気の乾燥によって増加する。
1㎥につき0.15mg以下とする。
ホルムアルデヒド ホルムアルデヒドは、化学物質過敏症シックハウス症候群の原因物質であり、濃度0.1mg/㎥程度で臭気を感じる。空気環境の基準として、ホルムアルデヒドの量は0.08ppm以下であることとされている。
臭気 臭気は、臭気強度や臭気指数で表され、空気汚染を知る指標とされている。